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オルゴーゾロ2.町の歴史を刻み物語る「ことばを話す壁画」たち

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今回は前回宣言(!!)したように、オルゴーゾロの象徴ともいえるムラーレス(Murales:壁画)をドド〜んと紹介していきます(^-^)

「キミは今ココにいるんだよ♪」とオルゴーゾロを指し「美しさと自然をリスペクトしてサルデーニャを愛そう!」とあるのは、観光客なら思わず撮っちゃうような1枚だ。

そもそも1960年代にファシズムやナチズムからの解放を記念して描かれたものが壁画の始まりとされていて、以降、不安定なイタリア経済や社会への鬱積した思いが壁画へと投影されるようになっていく。だから古い壁画ほど強いメッセージが込められているものが多い。例えば…




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RInascita(再生)と大きく描かれている中には

「ファシスト野郎が帰ってきた!」
解雇反対の闘いにNO!!」
「抑圧反対!」
「農地を領主から開放しろ!」
「女性も男性と共に戦う!」
「サルデーニャは軍事介入無き復興を求めている!」

といった民衆の“心の声”が散りばめられている。




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見ての通りの悲痛な表情は「羊飼いと労働者は地主と政府に対して団結する!」とある。

なんでもサルデーニャ島の木材は、欧州中の鉄道の“まくら木”に利用され、それを見込んだ外様な企業によって土地が不当に搾取されたり、後の農業恐慌などで、そうでなくても貧しかった島民たちを苦しめた。そんな中で止むを得ず犯罪行為が生まれたという。

もちろんそれは悪い事だ。でも…腐敗した政(まつりごと)の下で泣くのは、慎ましく暮らす市井の人々なのだ。今も昔も。うっすらと見える文字は…

Vardamos o non vardamos? ma e questo il problema.
土地(牧草地)を手放すか、手放さないか。それが問題だ。

と、かの有名なハムレットの台詞を引用している。ウィットに富んだというより、自暴自棄なやるせなさを感じてしまう。




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こんな女性たちの声も…。

幼子を抱いた女性は「人を殺す武器を作らないで」と言い、左下では、NYの工場火災によって閉じ込められた女工が129名も亡くなった事を嘆き、女性労働者や家庭内での女性の社会的権利や平等を訴えている。

メット姿の男性たちは「鉱山仕事がどんなか知っていたら、オレは100年でも隠れていただろう」と、過酷な現場を皮肉ってます。





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と、内容が重たいモノも多いけれど、時代を経て変化。今では、バルバジアの暮らしや因習を表現したり、社会や政治に対する普遍的なメッセージや歴史上の人物など、壁画の対象が多岐にわたっている。

嵐が去った後に現れる虹は美しいが
そうしないと見れないっておかしくないか?
嵐がなくても虹が見れるようになれば
この世が祝福で満ちるだろう。

的な事が書いてあるこのポエムは、きっと世界平和を謳っているのだろう。




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画風もさまざまなので、目新しく見飽きることがない。

ココなんて工事中の瓦礫と相まって、まるでインスタレーションみたい。





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おぉ〜!こんなガイドツアーがあるんだね。いや…あるみたい(^^ゞ

坂も多く、入り組んだ道が伸びる町内には150点以上の壁画がある。アタシたちが見たのも「ほんの一部」なので、重要な画を効率よく見て回りたい人は利用するといいかもしれない。

ガイド氏が説明しているのは、前頁で紹介した映画[Banditi a Orgosolo〜オルゴーゾロの盗賊]のポスターの画(右端にチラリ)だ。




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おぉ〜!マモイアーダのカル二ヴァーレの画もあった!ついさっき見てきた人間としては嬉しいことであります(^-^)

今はスマホを向けると手軽に画像翻訳してくれるので、メッセの意味を読み解いて画を見ると印象がガラリと変わると思う。そんな事1つ1つしてたら日が暮れてしまうだろうが(笑) これは?! と思うものは訳して見てみるのもイイと思います。




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ひときわ目を惹く画なのに、正面から撮らないヘソ曲がり(笑)

これはローマ時代から遊ばれてきたというモーラ(Morra)という数拳で、自分の数を怒鳴りながら出して指の合計数を当てるんだって。何語になるんだろ?「Battero は Quattro」「Chimbe は Cinque」になり、この勝負は合計5本になるから右の人の勝ち!になる。

年配者に馴染みのゲームはお隣コルシカ島でも盛んで(無謀にもコルシカ島にも行こうとした(笑) 毎年8月にはモーラの国際大会がサルデーニャで行われるという。




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パスティッチェリアを飾る壁画。

こ〜ゆ〜楽しげな画もそこここにあるので、
見るからに…な壁画の中で、ちょっとした清涼剤とアクセントになっている。





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新しげでPOPな壁画でも「TVの情報を額面通りに受け取るな」と、手厳しいことが書いてあり、油断ならない(笑)

これも時代と共に変化していくのだろう。10年、20年後には、一体どんなメッセージが描かれているのだろう。




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そう…壁画は壁画でもメッセージボード、掲示板のよう。たとえそこに文字がなくても読めなくても、画が雄弁に語りかける。オルゴーゾロの壁画が「ことばを話す壁」と言われるのも納得である。そこには、盗賊の町から壁画の町へと生まれ変わった歴史と軌跡が。住民たちの物語が刻まれているのだ。


【今回のオマケ その1.】
ヌオロからバスだと約30分と比較的行きやすいが、南からだとアクセスがちょっと大変なオルゴーゾロ。そんな時はカリャリから行きやすく、ムラーレス(壁画)発祥の町と言われるサン・スペラーテ(San Sperate)に行ってみるのもオススメ。オルゴーゾロのようなメッセージ色は無く、芸術的な壁画が並んでいます。

【今回のオマケ その2.】
前頁でマモイアーダのカル二ヴァーレが声明のようだと書いたけど、なんとあったのだ!Canto a tenore というユネスコ無形文化財にも認定されているサルド版声明が。羊に子羊、牛の鳴き声を模したハーモニーがたいへん印象的なので貼っておきます。も〜ちょっとトリップするよ(≧▽≦)
こちらの合唱もステキ♪ ←ハマってるし!(笑)





by 21giova | 2023-12-01 21:00 | ├ オルゴーゾロ | Comments(0)

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