雲ひとつない青空の中に奇っ怪な姿をさらす岩山と、そこに同化してしまった家々。手を変え品を変え(?!)幾度も現れるカラブリアの絶景にはホントビックリさせられる。一体どんだけアタシを驚かせたら気が済むね〜んっ?! って。
ボーヴァと同じように、イタリア統一前までギリシャ語圏の独立したコミューンだった
ペンテダッティロ〜Pentedattilo. 舌を噛みそなその名はギリシャ語で「5本の指〜ペンタダクティロス 」を意味する。それがグレカニコ(
移民のギリシャ語とカラブリア方言のMIX)に変換されて、数字の5〜Pente + 指〜dattilo = Pentedattilo になったという。
ギリシャ語でもグレカニコでも「5本の指」という意味には間違いない。
それもそのはず。その昔、尖塔のような岩が何本も立っており、さながら雲を掴まんとする巨人の指のようだったからだ。
まるで南イタリアのカッパドキア?! ペンテダッティロの奇景は画家たちの創作意欲を大いにくすぐったに違いない。全然知らないけど(笑) 英国人の画家、
エドワード・リア(上) の絵なんて、まさしく「手」!! 多少誇張が入っていたとしても、当時はこんな姿だったのかな〜と思うと、まるで秘境の聖地のようではないか。
下は知ってる人も多いはず。だまし絵で有名な
MC・エッシャーだ。1930年頃、実際にこの地を訪れた彼は、ペンテダッティロの風景を何枚も描いている。当時はココまで来るのは今よりもっともっと大変だったはず。でもそうまでしても己の目で見たかったんだよね。そらムリもない。アタシだってこの姿を知った時は、行かねばならぬ〜っ!!って思ったもん(^^ゞ
今にも傾き崩れてしまいそうな巨岩もそのまま。
90年前のエッシャーの絵と、驚くほど同じ姿を留めるペンテダッティロ。
なぜなら、時が止まっているから。
なぜなら、人の営みがないから。
今まで何度か書いてきたように、カラブリアを襲った2度の大地震と自然浸食によって、もろい砂岩でできた巨人の指は、手を閉じるように欠けていく。
そのうち大崩落の危険性も出てきたため、1960年、州はついに住民に撤退命令を出す。以来ココは廃村になってしまったのだ。
人々が村を去って約60年。
それが長いのか短いのかわからないが、目眩がしそうなほど強烈な陽射しの元では、ゴーストタウンな悲壮感はあまり感じられない。
むしろ、よくできたオブジェのような村人たちの置き土産を探検してみたくなるような、カラッとした荒涼感が漂っている。
ね、こ〜ゆ〜所なんて、ジモティが子どもの頃、1度は行ったことあるんじゃないかな〜。
アタシだったら絶対秘密基地作りに来たと思う。親に止められても…さ。
で、その子が親になって自分の子どもに同じ事言うの。
危ないから行っちゃダメ!って…ね(笑)
妄想半分だとしても、いかにもありそうな話で、1人、クスクス笑ってしまった(^^ゞ
だからといって、そんなサンダルで、そんな所に立たないでぇええ〜〜〜!!!!!
とは、エエ歳して無謀な事しまくるお連れサマ。
アタシも高所は平気です。むしろ好き♪
でも…こんな自然の、足場の悪い所は本能的にコワイ。ってかさ〜、子どもちゃうねんからやめて欲しいデス。心から。。。。( ̄o ̄)
*端っこ行く時は、足元に十分注意してください。こんな所で脳天カチ割ったら(おいおい!!)、病院行くまで「1日」かかるので。
周囲がスカーンと拓けているので、標高約250mでも眺めはよい。
ほぅら、イオニア海の水平線も見えるよ♪
撤退命令が出ても、なるべく近くに留まりたいと思った人たちも多かったようだ。
万が一、大崩落が起こったら、その距離ってどうなん?と思うほど。
わずか500mほど南に小さな集落もある。
暑くてアテクシがダウンしてる間に行方不明になっていた友人は、いつの間にか教会の鐘楼に登っていた。元気やな〜キミ(笑) そう、ここなら安心して遠景を臨めます。
さてこの教会には伯爵だったアルベルティ家の墓があり、いはくつきの血生臭い史実がある。前回長々とベルガモット談義をしたので今回は短く…って思ってたんだけど、あ〜コレは!というネタを知ってしまうと書き残しておきたくなるので、も1回、我慢して読んでください(^^ゞ
同じくペンテダッティロの名家だったアベナヴォリ家は、領地問題で長年揉めてるアルベルティ家と犬猿の仲だった(キ〜ッ、似たよな名前でややこしいわい!!) しかし、アベナヴォリ家がアルベルティ家の娘、アントニエッタをめとる事になり、両家の確執も収まると思われていた。
ところが思わぬ横恋慕が入る。アントニエッタの兄とナポリ総督の娘が結婚することになり、その家族がペンテダッティロにやって来た時のこと。体調を崩しペンテダッティロに長逗留することになった総督の息子が、アントニエッタに熱烈フォーリンラブしてしまったのだ。
彼の家柄に揺らいだのか、当主となっていたアントニエッタの兄ロレンツォは2人の結婚を許してしまう。これに激怒したのは彼女と結婚するはずだったベルナルディーノ・アベナヴォリだ。彼の怒りはもっともだが、オジサンと政略結婚するより異国の若者に惹かれてしまう。まんまドラマのようにベタな展開である。しかしこの後がまずかった。ヒジョ〜にまずかった。
そうでなくても仲が悪かった両家の黒歴史が再燃。家名と己のメンツを潰されたベルナルディーノは武装隊を率いてアルベルティ家を襲撃する。問題の2人は総督に対する人質とし、アルベルティ家の人間のほとんどを、幼子まで無残に虐殺。特にロレンツォにはライフル2発を撃ちこんだ上に「14回」も刺しに刺した。
息子を囚われたナポリ総督も黙ってない。首謀者のベルナルディーノは取り逃がしたものの、軍を派遣して下手人の首をペンテダッティロ城の城壁にさらしたという。
16世紀後半に起こったこの出来事は「La tragedia di Pentedattilo〜ペンテダッティロの悲劇」という小説になったほど世間の耳目を集め、冬の北風がたてる音はロレンツォの悲鳴で、ペンテダッティロの5本の指は、血に染まったベルナルディーノのソレであるという言い伝えと共に、アルベルティ家家虐殺の物語は以後、長く語り継がれる事となる。
惨劇の場が今は廃村と化してる事に時の流れの無情さを思うが、こ〜ゆ〜事があったんですね。つたない収集力なので多分、多分ですよ、内容合ってると思うけど(!!)
Wikiにも詳しい記述があるので参照してみてください。
そっか〜。知ってる人からすると不吉な5本指なのかもしれない。
→ ええ、ハイ。いつものように(!!)後で知ったのでありマス(^^ゞ
事前に知っていたら少しは見る目が違ったかもしれないけど、年老いた巨人の掌(たなごころ)に護られているように見えたペンテダッティロ。でも…それはそれでよいのだろう、きっと。
史実は史実として、時は過ぎ、人々の思いは散り散りに舞う。
確かな事はただ1つ。それは…天地の怒りに触れない限り岩山が今日もそこにあり、明日もそこにあるということだ。少なくともアタシにとってペンテダッティロは、とても美しい所であったことも。